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待ち合わせ場所には既に彼らが来ていた。私たちは飲食店へと向かい、そこで様々な会話を交わし、彼らの発言に対して、彼らがほどほどに笑いそうな返答を返した。そうして私たちは笑った。 「お前は付き合いが悪くなった」と彼らは言った。その彼らの発言、過去…

冷蔵庫から連想したこと

一本・二本・三本……三本ある。3本の矢をまとめると折れにくくなるという逸話は、矢が命そのものであった当時の武人にとって大事な心得(こころえ)になっていただろうなと勝手に想像する。 当然、私の冷蔵庫に矢なんてものはなくて、三本あるのは、コーラだ。…

電車から連想したこと。

町中を歩けば電車の音を聴くことがあるだろう。ガタンゴトンと音を纏いて、何十何百もの人間を運んでいく。当然私は、電車は乗り物なのだから、その電車が乗客たちを目的地に運んでいくものとばかり思っていたのだが、よくよく考えればそのような思い込みに…

独りこうてい

生まれた時分からありのままの自分を肯定されたことはないように思う。もちろん、なにかしらを評価されたことはあるだろう。それは勉強であったり、友人からの賞賛であったりするわけなのだけれど、きっと僕はそれらに満足していなかった。満足させられない…

死角

「なあ、飲み物はいるかい……」気だるい声。愚かな声。誰かの声。これは僕の声だったのか、と認識した。そのように独りごちた僕の耳にしか届かないだろう言葉に予想に反して返事が上がった。 「いるよ」 そうか、いるのか。と離散していくつかのポータルに飛び去…

欠陥

タンスが開いている。ティーカップの蓋は開けっ放しだし、冷蔵庫も開け放たれていて、蛇口も捻られているし、窓も開いていて部屋も玄関もドアが開け放たれている。 蓋。窓。ドア。なんらかの開け口。それらは蓋の外のなにかと区別をつけるために存在していて…

仕事中に考えてたこと

建物内部が何かの臓器のように延々と動き続け、製品を造り出していく。つまり僕は細胞かなにかなのだろうか。ある意味ではそうだろうと思った。仮に僕がミトコンドリアとして存在したならば、酸素を作り続ける存在であることが大体決まる。しかしミトコンド…