欠陥

 

 

 タンスが開いている。ティーカップの蓋は開けっ放しだし、冷蔵庫も開け放たれていて、蛇口も捻られているし、窓も開いていて部屋も玄関もドアが開け放たれている。

 

 蓋。窓。ドア。なんらかの開け口。それらは蓋の外のなにかと区別をつけるために存在していて、他の家はきっとその区別をつけなければ、不都合なのだろう。開かれたものは閉じられなければ、気持ちが悪いのだろう。私のタンスには服が無いし、カップには飲み物も無いし、蛇口から水が流れることもない。この家が何かを区別したところで、意味がないのだ、だが。

 

だが、それならば区別をする必要がないのだなという意見を私は拒絶する。それならばなぜこの家には蓋があり、窓があり、ドアがあるのかが説明出来ないからだ。それらのものがそこにあるのなら存在している意味があるはずだ、あるはずなんだ。意味を持たなければならない。持たなければならない…。

 

……分からない。私にはその意味が分からない。そして私以外にその意味を見出だそうとするものもいない。用をなさず、消えもしない分裂症さながらのこの欠陥住宅を、

私は、どうすればいい?