2021-03-01から1ヶ月間の記事一覧

burn my dread

世界のすべてを覆い尽くさんばかりに美しい夕陽の下で緑がそよぎ稲は安らかに垂れ泥は揺蕩いその内部には雑多な生命が揺れて各々輝きを迸らせている、ように見えるその景色はありもしない偽りであることを、私は理解していた。この場所には誰もいない。稲を…

狂人日記

ここにいる僕、あるいは私、俺、君、お前。各々の性質、各々の存在。あまりにも分かたれた対の我らよ。あなた方はあまりにも生きも絶え絶えに這い縋り良くもまあ絶望の穴を埋めては掘ってその形を保とうとするものだ。何回死んだ。きっと億回。世界の有り様…

欲望

そろそろだと感じた。今日もまた、私はあの崖にいかなければならなかった。そのような思考を片隅に置きながら私はマウスやキーボードの上に指を踊らせる。 製品を造るための設計図を作らなければならなかったからだ。これは義務感に乗っ取った退屈な作業でも…

迷走

死んだ曾祖母はキリシタンだった。 一世紀近い時の流れを支えた純白の遺骨を眺めながら僕が考えていたのは、曾祖母の神に対する姿勢だった。国のために、神のために、そのような大きな物語が途絶え微分されたショート・ストーリーが乱雑される現代にあたって…

吐瀉物

世界とは強者の総体である。 私のような矮小な人間が一つの座席を破壊したこと。一つの栄光を剥奪したこと。そのような事実は世界への私の興味を喪失させる。彼らがどれほど情熱を傾けようと私が冷えた弾丸を一度放てばそれはあっさりと頭蓋を穿ちすべてを楽…