吐瀉物

世界とは強者の総体である。

 

 私のような矮小な人間が一つの座席を破壊したこと。一つの栄光を剥奪したこと。そのような事実は世界への私の興味を喪失させる。彼らがどれほど情熱を傾けようと私が冷えた弾丸を一度放てばそれはあっさりと頭蓋を穿ちすべてを楽に終わらせる。つまらない、という子供染みた思い。次いで、罪悪感(……罪悪感?嗤)。次いで、諦観。私は飽いて拳銃を捨てる。それを持つ権利も、人間性をも。強さに意味は見出だせはしなかったからだ。富も力も名誉にも一切の興味はない。それは卑屈をとってルサンチマンを働かせているのではなく、私が彼らの上に立ってすべてをかっさらうことにより得た知見を述べているに過ぎない。どのような形においても強者はなにか踏み台を要する。力が平和をもたらすことはないようだ。それは一種の暴力に過ぎない。本人がそれを分かっていなくても作動する自動モジュールのようだ。それを分かっていなかったから私はなにも出来なかった。だから私は爪を折ると決めた。

皆が世界に興味を抱いている。皆が世界に。もちろんそれは良しとされていることだ。ただ、彼らには広義の仲間がおり、世界に興味を有さない人間は、数人の友人を除いては、どこにも広義の仲間がいないということを事実として書いておくに留まるだけだ。私は社会の下流で思索を巡らしながら静かに生きていくつもりだ。それ以外を私は望まない。

 

生きるか。