一本・二本・三本……三本ある。3本の矢をまとめると折れにくくなるという逸話は、矢が命そのものであった当時の武人にとって大事な心得(こころえ)になっていただろうなと勝手に想像する。
当然、私の冷蔵庫に矢なんてものはなくて、三本あるのは、コーラだ。これだけあれば多少のがぶ飲みをしても不足することはないだろう。私はコーラが大好きであり、生きがいであり、武人にとっての矢が私にとってのコーラなのだ。何をいっているか分からないと思われるかもしれないが、つまりはそういうことだ。
それにしても、コーラを飲むために冷蔵庫まで移動をするのはめんどうだなと思う。いっそ腹に冷蔵庫が付いていればいつでもどこでもコーラが飲めるというのに。……そうだ!近所に住んでいる天才博士ならなんとかしてくれるかもしれない!
これを思い付く私こそが天才なのでは?そう思いながら私は揚々と博士の元へ向かい、事情を説明した。
「というわけで博士、私の腹を冷蔵庫に改造できますか?コーラが三本入るとありがたいんですけど」そういうと、博士がいきなりピースサインを作った。
「もちろん、可能だよ。ただし二百万かかる」……ピースサインではなく「二」という意味だった。が、そんなことはどうでもいいことだった。
「やった、お願いします!」
「……二百万円だよ?君は本当にコーラが好きなんだね……」
「そうですよ!いつでもどこでもコーラが飲めるのなら、それはもう…」きっと、天国だと思う。
「分かった。私に任せてもいいんだね?」
「はい!」
そうして私はお腹にコーラを内蔵できるようになったのだ。イスに座った状態でさっそくお腹を開けてコーラを取り出す。栓を開けて口を開けて……そんな開封作業を終えたところで容器を口につける。そうしてコーラの旨み、甘み、味わい、叩き起こすような炭酸の快楽と液体が口内を流れ回る滑らかな感触を確かに感じながら、私は至福に浸っていた。これだ。これこそが幸福なのだと思った……。そうしてこの幸福はこれから、常に私と共にあるのだ……。
「ありがとうございます、博士……」
「うむ、満足のようでなによりだよ。身体に以上はないかい?」
「全然!ほらこの通り……」そういって私は立ち上がったが、その瞬間、急にズシンときた。
「あ…れ。なんだか体が重いです」
「ふむ。冷蔵庫を内蔵しているからね……」
「これでは生活するのに困ります。なんとかできませんか…?」
「では、体全身をパワーに特化した機体に改造してみるのはどうだろう?いままでの何倍もの力で生きることができるだろう」
「そんなことができるんですか!?でもお金がもうなくて……」
「いや、無料でいいよ」
「え!?」さっきは二百万円だったのに、ただでしてくれるのだろうか!?
「私に任せてもいいのかい?」
「は、はい!お願いします!」
そうして私は常人の何倍もの力を手に入れることができた。
「凄いです!凄く、身体が軽い…!ほら!!こんなこともできちゃいます!」私は博士の部屋にあったタンスを片手で軽々ともちあげる。
「うむ、満足なようで何よりだよ」
そういってにこにこしている博士を見ながら、私はあることを思い付いてしまった。
「博士、体を改造できるのなら、もしかしたら頭も改造することができますかね……?」
「うん?もちろん可能だが。どうしたね?」
「私、数学が出来ない学生だったんですよ。それで馬鹿だとか論理的じゃないだとか散々言われてそれが今でも悔しくって……私の頭を数学が得意になるようにして欲しいんです」
「なるほどいいだろう。私に任せてもいいんだね?」
「お願いします!」
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010100101010100101010101001010100110
あ0101010101010100101010101れ0101お01
かし0101011001いな0101010101こ01010101ー10101ら0101011コーラ0101010
飲もう010101飲まなきゃ0101010わたし010
の生きがい010011私010私私私コーラコーラ
飲む。手動かす。開ける開ける開ける。運ぶ。飲む。飲んだ。あ。
おいしく、ない
──
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